フランス語で文章を書くときに気をつけなければならないのは、同じ単語を繰り返さないということです。ひとつの単語を繰り返して用いる場合には、文体的な効果を狙うとき以外には、ふたつの同じ単語の間にある程度の距離を置かなければなりません。これは代名詞や冠詞にはかかわりませんが、名詞や動詞の場合は、できるだけ類義語などで置き換えた方がいいということが一般論として云えます。換喩(métonimie)は日本語ではどことなく気どったレトリックと感じられることがありますが、フランス語ではただ同語反復を避けるためだけに用いられることがかなり頻繁にあります。
それでも類義語で置き換える場合でも注意が必要です。なぜなら類義語はあくまで類義語であって、まったく同じ意味をもっているわけではないからです。それでも私はここでフランス語の作文法について書くつもりはありません。類義語の意味のちがいについての軽い話題についてお話ししてみたいと思います。
ここでは「驚いた」を意味する étonné と surpris についての面白いエピソードを紹介しましょう。
第三帝政下で発行されたものの今でも愛用者が多いフランス語の大辞典を編集したエミール・リトレ(1801-1881)さんは、女中に手を出す悪い癖があったそうです。あるとき女中といちゃいちゃしているときに奥さんが扉を開けて大声で叫びました。「おやまあ、不意をつかれたわ(je suis surprise)!」 リトレさんは服を直しながら答えました。「いいえ、奥さんは動転したのです(vous êtes étonnée)。不意をつかれたのは私たちの方です(c'est nous qui sommes surpris)。」
むりやり意味のちがいがわかるようにして日本語にしても話のニュアンスがよくわかりませんが、「わあ、驚いた、びっくりした」という意味のことを奥さんが云ったときに、リトレさんは「ちょっとそれは使い方がちがいますよ」ということを云っているというところです。やっぱり日本語ではまったく面白さがわからないので、フランス語の原文を引用します。
Etonner という単語は「雷(tonnerre)に打たれる」というところから語源がきています。しかし現在では必ずしも深い精神的な動揺を伴うものとは理解されていません。それでも「思考停止」「疑い」「理解不能」を伴うものだと考えられます。
他方で surprise はよいものでも悪いものでもありえます。特にプレゼントと結びついたものとしてこの単語は理解されます。
最終的には、現在においては、もしこのふたつの単語を区別して用いなければならないということならば、étonnement は不快感を惹き起こす予期せぬもの、surprise はその反対に快適なものである期待していなかったものであるという風に考えることができるでしょう。
この記事はリトレの類義語に関する面白い記述をまとめてそれにコメントした Surpris ou étonné? という本を参考にして書いたものです。これからもこの本から面白そうな話題を見つけて書いてみたいと思います。
それでも類義語で置き換える場合でも注意が必要です。なぜなら類義語はあくまで類義語であって、まったく同じ意味をもっているわけではないからです。それでも私はここでフランス語の作文法について書くつもりはありません。類義語の意味のちがいについての軽い話題についてお話ししてみたいと思います。
ここでは「驚いた」を意味する étonné と surpris についての面白いエピソードを紹介しましょう。
第三帝政下で発行されたものの今でも愛用者が多いフランス語の大辞典を編集したエミール・リトレ(1801-1881)さんは、女中に手を出す悪い癖があったそうです。あるとき女中といちゃいちゃしているときに奥さんが扉を開けて大声で叫びました。「おやまあ、不意をつかれたわ(je suis surprise)!」 リトレさんは服を直しながら答えました。「いいえ、奥さんは動転したのです(vous êtes étonnée)。不意をつかれたのは私たちの方です(c'est nous qui sommes surpris)。」
むりやり意味のちがいがわかるようにして日本語にしても話のニュアンスがよくわかりませんが、「わあ、驚いた、びっくりした」という意味のことを奥さんが云ったときに、リトレさんは「ちょっとそれは使い方がちがいますよ」ということを云っているというところです。やっぱり日本語ではまったく面白さがわからないので、フランス語の原文を引用します。
Chacun a ses faiblesses. Littré en avait pour sa bonne. Un jour qu'il la lutinait, Mme Littré poussa la porte et s'écria: "Ah, monsieur, je suis surprise!" Et le regretté Littré, se rajustant, lui répondit: "Non, madame, vous êtes étonnée. C'est nous qui sommes surpris."リトレさんの編集した辞書には、かなり主観的な記述が多く、それが魅力の一部をなすと云われています。リトレさんはこのふたつの動詞と同系列のふたつの名詞を比較しています。Surprise は不意をついて起こることだが、étonnement は深い精神的な動揺を惹き起こすものであるとリトレさんは云います。つまり surprise は étonnement よりも弱いものなのです。「不意をつかれる(être surpris)」というのは「期待していなかったものに出くわす」ことであり、「動転する(être étonné)」は「思考を停止させ動揺を与えるような衝撃を受ける」ことだとリトレさんは説明しています。「不意をつかれる」「動転する」は両方とも「驚く」「びっくりする」と訳される単語ですが、あえてちがいを強調して訳しています。
Etonner という単語は「雷(tonnerre)に打たれる」というところから語源がきています。しかし現在では必ずしも深い精神的な動揺を伴うものとは理解されていません。それでも「思考停止」「疑い」「理解不能」を伴うものだと考えられます。
他方で surprise はよいものでも悪いものでもありえます。特にプレゼントと結びついたものとしてこの単語は理解されます。
最終的には、現在においては、もしこのふたつの単語を区別して用いなければならないということならば、étonnement は不快感を惹き起こす予期せぬもの、surprise はその反対に快適なものである期待していなかったものであるという風に考えることができるでしょう。
この記事はリトレの類義語に関する面白い記述をまとめてそれにコメントした Surpris ou étonné? という本を参考にして書いたものです。これからもこの本から面白そうな話題を見つけて書いてみたいと思います。


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